ローイングの基本は「大きく強く」であると教えられてきました。今回は、前回の「大きく」に引き続き、「強く」というところに挑戦していきます。「じゃあ小さく弱く漕げばいいの?」ってことではないですよ!やはり「強く」は間違いというのは極端かもしれませんが、大きな誤解を与える表現であると思っています。その理由を2点説明していきます。

1.頑張ればいいってもんじゃない!
例えば、ローイング体験会に参加してくれている方に「強く漕ごう!」っていうとほぼ間違いなく腕が力んだり、肩が上がったりします。強く力を発揮するべきなのは、ハムストリングス等のメインの筋肉で、その他の筋肉の力みはバテることやボートのぎこちない進みに繋がります。腕の筋肉だって、肩の筋肉だって頑張らないといけないのはそうなのですが、一番頑張らなければいけないのはどこってことですよね。
もっというと、どれだけ選手が頑張っているかではなく、ボートが進んでいるかどうかに着目しないといけないですよね。頑張っていることが、ボートの進みに還元されているかを常に意識しないと、レースに出て隣よりボートを速く進めることはできません。体中の筋肉がどれだけ頑張っているかよりも、(自分の体のようすに集中するのもとても大事です)キャッチからフィニッシュまでクラッチに水平方向に一定の力が加わり続けているか、足の裏(ストレッチャーシューズ、ボード)に圧力が加わり続けているかということに注目すべきです。
メインの筋肉が力を発揮しているか。他の筋肉に無駄な力みはないか
キャッチからフィニッシュまで、クラッチに水平方向に一定の力が加わり続けているか
フィニッシュまで、足の裏に圧力が加わり続けているか
2.何を「強く」しないといけないのか
「強く漕げ!」っていわれて、そもそも何を強くしないといけないのか。そんなの「力」に決まっているじゃないか!
力よりもっと大事なものがあります。(もちろん力も大事です)
ボートを速く進ませる要素として最も大事ものの一つが「パワー」です。
「力を強く」とはいいますが、「パワー」を強くはいいませんよね。力(force)とパワー(power)はどう違うのか。中学理科で習います。パワー=仕事率のことです。(電力もパワーといいます)
物体に力を加えて、その力の向きに物体を動かすことを、仕事をするといいます。仕事(work)は力と移動距離の積で表されます。我々は、ボートに対して仕事をしているわけです。
仕事(work) = 力(force) × 移動距離
仕事率(power)は、単位時間あたりにする仕事のことです。仕事の効率ということができます。仕事を時間で割ってあげると計算されます。我々は、レースで競っているので効率よく(大きなパワーで)ボートに仕事をしなければいけないです。
仕事率(power) = 仕事(work) ÷ 時間
式を変形してみます。仕事率は、仕事を時間で割ってあげると計算できます。仕事は、力と移動距離の積でした。つまり、力と移動距離の積を時間で割ってあげるということになります。ここで、移動距離を時間で割ったものは何だったかというと。。。そう!速さ(speed)です!
仕事率(power) = 仕事(work) ÷ 時間
= 力(force) × 移動距離 ÷ 時間 (移動距離÷時間=速さなので)
= 力(force) × 速さ(speed)
つまり、仕事率は力と速さの積ということもできます。
仕事率(power) = 力(force) × 速さ(speed)
最初に「強く漕げ!」が誤解を与える表現といったのはこのためです。いくら力一杯漕いでいても、ゆっくり体が動いていては、効率が悪く、選手の頑張りがボートの進みに還元されているとはいえません。(ウエイトトレーニングで重いおもりを持ち上げているとき、力は発揮しているけど、じっくり持ち上げている状態)パワーを出す=効率よくボートを進めるためには、力一杯漕ぐことに加えて、スピードを意識することも忘れてはいけません。
パワー = 力 × スピード
効率良くボートを進ませるためには、力一杯漕ぐとこととスピードを出すという意識の両方が大事!
以上、ごちゃごちゃ書きましたが、結局「水中!強く!」ってがむしゃらに漕ぐと艇が立って、スピード出ちゃうんですよね!物理の公式も大事ですが、頭でっかちになりすぎずに思いっきりボートを進めていくことも大事ですね!
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